極上お姫様生活【完】
多分夕食は美味しかった。食べた事のない高級な食材が並んで、そのどれもが美味しかった……ような気がする。
正直、あまり覚えていない。
何故って?そりゃあ―――。
「蒼空、はぐれんなよ」
「は、はははは、はい」
恐怖故に。
身体が震えて止まらない。おまけに声も。
じゃんけん大会の結果、ペアはあたしと橘君。八木原君と櫻田君。翼ちゃんと松神先生に決まった。
八百長があったのは秘密ですが。
「林を抜けた先に公衆電話があって、そこにノートがあるから名前を書いてくる。ルール確認は大丈夫か?」
ルールはばっちりですが……いつの間に公衆電話にノートを?
「今日、わざわざ林で降ろされて不思議に思わなかったか?」
首を傾げていると、察したように櫻田君があたしに近寄る。
「あ…思いました。目的地は海なのにどうしてここで降ろすんだろう、って」
林で降ろされてバスと一緒に海まで歩いた時、うん、確かに不思議だった。