極上お姫様生活【完】
そっと握られる手。温かい体温に安心して、いくらか気持ちが和らいだ。
そうだよね、橘君も一緒なんだから大丈夫。
ぎゅっと握り返すと、橘君は優しく笑った。
「……お前ら、まじで気を付けろよ」
暫くして、八木原君と櫻田君が血相を変えて戻ってきた。息も絶え絶えにあたしたちに忠告する。
「何だよそんな息切らして。幽霊でも見たか?」
「幽霊なんざ比じゃねぇよ、…あいつらは」
あいつら?
「目が合ったら終わりだと思え。どこまでも追いかけてくんぞ」
な、何それ怖い。
「だらしないわね、大の男が。じゃ、朝陽行きましょ!」
翼ちゃんは汗だくの二人を見て冷たく吐き捨てた後、松神先生に満面の笑みを向けて腕を絡ませる。
嬉しそうで何よりです。
「はぐれないで下さいね」
松神先生も笑みを浮かべ、林へと足を進めていった。
数十分後、二人が走って戻ってきたのは言うまでもない。