極上お姫様生活【完】
こんな状況ではぐれたら面倒な事になる。俺は逃げ出す蒼空の腕を掴んで無理矢理引き寄せた。
「どうしたんだよ…?」
荒い息を繰り返す蒼空を宥めるように、できるだけ優しく抱き締める。
「っ、虫…虫……っ!!」
泣きじゃくる蒼空の視線を辿ると―――。
‘アオカミキリモドキ’
カンタリジンという猛毒を体内に持っていて、うっかり潰すと体液が皮膚に付着してしまう。
そこに水膨れができ、破れ、カサブタになると、尋常じゃない痒みに襲われるらしい。
と、昔興味本意で買ってもらった図鑑に記載されてた気がする。
どうやらそのアオカミキリモドキが蒼空の腕に止まったみたいだ。
刺激しない方がいいからあまり騒がないで大人しくしてほしかったんだけど……。
「や、やだぁ…っ!」
無理みたいだ。
というか、さっきあいつらが言ってたのはこの事か。目が合ったら終わり、だなんて大袈裟な話だ。
―――何て、笑っていると。