極上お姫様生活【完】
「なっ…!!?」
顔を上げるとそこら中にアオカミキリモドキ。まるで巣の中に入っちまったみたいに、数え切れないほどの数だった。
「離して…っ」
呆然としてる間にも、蒼空は俺の腕から逃れようとする。
「落ち着…、―――っ蒼空ちゃん!」
俺の腕を振りほどき一目散に走り出す蒼空。まじで危ないから見失うわけにはいかない。
「っ、何だよこの数…!」
四方八方アオカミキリモドキに囲まれ、身動きが出来ない。その間にも蒼空は遠くなっていく。
……ちっ、仕方ねぇ。
アオカミキリモドキの群れを掻き分け走る。何より大切な蒼空を、危険な目に合わすわけにはいかねぇんだ。
「行くぞ蒼空!ちゃんとついてこい!!」
蒼空を追い越しながらその手をしっかり掴む。握り締めると、蒼空も少し安心したように笑った。
方向なんて分からない。だけど蒼空を守るために、俺は走った。小さく震えるその手を取ったまま。