極上お姫様生活【完】
「あたしには…到底辿り着けないです」
「そんな事ないわよ、自分の事なんだから。…ま、相談ぐらいは乗ってあげるから」
ね?、と笑顔を向けられればもう何も言えない。あたしはもやもやを抱えたまま、遥登君を思い浮かべていた。
―――蒼空、おいで。
まただ、あの時と同じ。海で倒れた時と。
ひどく安心する声が響いて、あたしを包む。不安な事が全部、柔らかに溶けていくみたい。
誰なのか知りたい。
あなたは一体誰なの……?
「っ」
……夢。
二度目の入浴に、大浴場へ行ってしまった翼ちゃんを待っているうちに寝てしまったみたいだ。
目を擦りながら身体をあげる。腕には軽く畳の後が付いてしまっていた。
「………」
夢の内容はまだ鮮明に思い出せる。忘れないうちに、知りたい。あの人が一体誰だったのか。
あたしは部屋を飛び出して、一目散に走った。