極上お姫様生活【完】
「……あ、の」
未だ八木原にしがみつく蒼空が、遠慮がちに声を出した。
「翼ちゃんの事…泣かせないで下さい……」
「っ…!」
ここまでされてなお、他人の心配をするのか。もしかして俺が嫉妬してるの、気付いてない?
「本当に、翼ちゃんは先生の事―――」
「分かりました、約束します」
俺が泣かせるんじゃないかと、よほど心配らしい。…ちょっと傷付く。
「もう、あなたにひどい事はしません。ついでに…彼女の事も安心して下さい、泣かせたりなんてしませんから」
俺がそう言うと、蒼空はほっと安堵の息を吐いて柔らかく笑った。
その前に立つ八木原は相変わらず俺を睨んだままだが。
「では……失礼しますね」
表情の違う二人にニッコリ笑い掛けて、俺はその場を去ろうとした。
「待てよ。…あんた、どうする気だ?」
野暮な事聞くんじゃねぇよ。
「若宮先生には、もう少し優しく接してあげようと思います」
軽く笑って、俺は今度こそ二人に背を向けた。