極上お姫様生活【完】
「また……?」
あたしの言葉が引っ掛かったのか、八木原君は眉を寄せる。
「また、ってどういう意味だよ?」
つい口から零れた言葉を、透かさず八木原君が拾い上げる。
「いや…えと、別に……」
「誤魔化すんじゃねぇよ、ちゃんと言え」
八木原君は…あたしの過去を知りたがっているのかな。あの事を話すのは、怖い。
「……蒼空。お前時々、必要以上に自分を責めるよな。あれって、昔に何かあったからじゃねぇのか?」
図星を指され、ギクリと肩を揺らす。
「…無理には聞かねぇよ。でも、話す事で少しでも楽になれんなら…俺は力になりたい」
胸に響く八木原君の声は、ひどく安心する。
―――話したい。
もしかしたら引かれるかもしれない。軽蔑されるかもしれない。でも、それでも聞いてほしい。
「全部、話します。…聞いてくれますか?」
顔を上げてそう言えば、八木原君は優しく目を細めてもう一度強く抱き締めてくれた。