極上お姫様生活【完】
謝る必要なんてないのに。グイと涙を吹いて深く頭を下げる蒼空を見て、無性に抱き締めたくなった。
「怒ってないよ、むしろ嬉しいし!だから頭上げて?」
遥登がそう言うと、ゆっくり頭を上げた蒼空はヘラリと口元を歪めて動かなくなった。
虚ろな目がどこか一点を見つめたまま固まる。
「……っ、蒼空!!」
グラリと倒れる直前で何とか支える。
「は……っ」
やっぱり、まだ熱は引いてなかった。それどころか、更に悪化したように思える。
熱があるくせにそれを我慢してわざわざ謝りに来た蒼空に、嬉しさを感じつつ、不安も感じた。
人のためなら自分を犠牲にする彼女は、時々無茶をしすぎる。
「蒼空、聞こえるか?」
「う…、ん…はい……」
幸い意識はあるようだが、ハァハァと荒い息を肩で繰り返し、薄く開いた瞳からは涙が滲んでいて、多分異常なまでに苦しいと思う。
「刺激与えないほうがいい、このままここに寝かすぞ」
「大丈夫か、蒼空…」
蒼空の熱は39℃近くまで上がり、俺たちは夜通しで看病し続けた。