極上お姫様生活【完】
「……え…?」
聞き間違いなんかじゃない。でも…、信じる事ができない。
八木原君は今―――。
「昨日は俺もどうかしてた。多分酔っぱらってたから、あんな事言っちまったんだと思う」
嫌だ…嫌だよ。
「変な事言ってごめんな?迷惑だったよな…」
何言ってるんですか。何でそんな風に笑うんですか。
「全部忘れよう、お互い」
涙が溢れて止まらない。あぁそうなんだ。八木原君はあたしの事嫌いなんだ。
―――迷惑、だったんだ。
「…じゃあ」
「っ」
背を向けてしまう八木原君に、今すぐ飛び付きたい。嫌だって、好きだって伝えたい。だけどそれは迷惑だから……。
これ以上嫌われたくない。
「あ、あたしの方こそ、変な事言って困らせて、ごめんなさい…わ、忘れます……」
振り返ってすらくれない八木原君の大きな背中に言葉を投げる。忘れる事なんて、できないはずなのに。
―――パタン。
静かに閉まる八木原君の部屋の扉。
…フラれちゃった。もう、……あの笑顔があたしに向けられる事はない。二度と、ない。
誰もいない部屋に戻ってきたあたしはただ、泣きじゃくる事しかできなかった。
To be continued---.