偽りの温もり
ガチャッ…

「ただいまぁ…」

雅也は玄関につっ立っていた。
何事もなかったかのように
言えた!って思った、
その瞬間

「バカ!」

って怒られた。
それが当たり前だと思うけど。

「どれだけ探したと思ってるんだよ」

安心したかのように
雅也はその場にしゃがみ込んだ。

少し泣いてるようにも思えた。

「ごめんなさい…」

「お前に何かあったら
どうしようって…」

消えそうな声で私に訴えている。

「だって、イライラするあたしを
見たくないって…」

「だからって、
出ていくことはないだろ」

冷静に考えればそうだ。
今思い返せば、笑える(笑)

「せっかくの休みに
せっかくの二人の時間なのに」

「ごめん…なさい…」

とりあえず
ごめんなさい、しか言えなかった。
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