偽りの温もり
「…ごめん」

「…何のごめん?」

いきなりすぎて
びっくりした。

「本当は俺…
怖かったんだ。
リカに逆らったら
何されるか
分かんなかったし」

そう話をするヒデは
どこか
淋しそうな目だった。

「…で?何なの?」

私は冷たく当たる。

「ただの言い訳なら
もう聞かないよ」

あの一件で私は
今まで仲良かった友達、
楽しい思い出、
これからの学校生活、
それら全部が
なくなった。

それを全部、壊した。

リカも許せないけど
ヒデも同じくらい
許せない。

少なくとも
私の心を弄んだ、
張本人。

それから
ヒデは黙っていた。

「リカの事、
どう思ってんの?」

「もう、連絡は
取り合ってない。
同じ学校なだけで
何も関わりはない」

「ふーん…
じゃぁさ、
リカを騙してよ」

「…えっ?」

「リオを騙せたんなら
リカだって
騙せるでしょ?」

少したって
ヒデは頷いた。

「とりあえず…
私と付き合ってよ
今日から彼氏ね?」

でもね、本当は
私の傍に
いてほしかっただけ。
< 32 / 120 >

この作品をシェア

pagetop