偽りの温もり

「お疲れー」

「雅也もお疲れ」

俺の隣に並ぶリオから
微かに歯医者独特の
匂いがした。

「歯医者、そろそろ
行かないとな」

「そーだね。
歯石取らなきゃね」

「「…」」

それから俺達は
黙ったまま
家に着いた。

「おかえりー
リオ、お疲れ」

「ヒデもお疲れ様
あ、ご飯食べていい？
コンビニで
買ってきたんだぁ」

その袋の中には
小さいコンビニ弁当が
入っていた。

気づかなかった。
どんだけ
緊張してるんだろ。

「あ！リオが
化粧してるー
普段、あんましねぇのに
どうしたのかなー？」

「うるさいなぁ…」

リオは顔を赤くして
耳も赤くして照れた。

ヒデが
気を使ってくれたのか、
俺が特別だって事を
気づかせるつもりで
言ったのだろう。

リオがご飯食べてる間
俺達はテレビ鑑賞。

「ごちそうさまでした」

小さなお弁当の中身は
あっという間に
なくなった。