偽りの温もり
私が過去を話してから
一言も話さなかった。

「…私は
雅也が思ってるような
女の子じゃないんだよ」

結局、雅也も
タカシと同じなんだ。

好きだった女に
酷い過去があれば
当然、引く。

そんな事
前から知っていた。

なのに、こんなに
胸が痛いのはなんで?

「…俺、帰るわ。
雅也…リオの話
ちゃんと聞いてやって」

雅也は玄関先まで
ヒデを送っていた。

微かに聞こえたのは

「リオはあぁ見えて
弱い奴だから」

と、ヒデの声。

そんなヒデだから
好きになれたんだ。

そう、改めて思った。

結局、私も想い出に
できてないのかな?

けど、雅也を
失いたくないのが一番。

雅也が戻ってきたら
一番に伝えよう。

「…ッ…」

雅也が一番好きだって…

けど、雅也は
好きだって
言ってくれないのかな?

私は一人で考えていた。
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