ヘタレは大人しくヘタれてろ
「大丈夫。痛くないよ?」
「注射前の医者は皆そう言う」
ちょっとチクッとするだけだから。あの言葉に騙された子供が何人いることか。
「えっと…俺医者じゃないんだけど……」
「知ってるよ。君は輸血ってか献血のほうだかんね」
「………。」
「何か言え」
「ああ、ごめん今の笑うとこ?」
「干からびろ」
ヘラヘラと笑う克海。
ごめんちょっとイラッとした。
「ねえ……何で涼ちゃんはそんなに俺を拒むの?」
なにいきなり真剣な顔して。
「別に克海を拒んでるんじゃないよ」
「…じゃあ何?」
「……血吸うとか怖いじゃん」
「え……俺怖い?」
悲しそうな顔をする克海。
あれ、なんか誤解された。
「違うって。克海が、じゃなくて、血を吸うことだって」
「…でもそれって結局俺のことじゃん?」
「あーもうっ!なんでこんな時だけネガティブなの!?」