一人よがりのロミオとジュリエット
ある雨が降る日、電車ではいつもの女性が座り、私も愛読書である新六法を開く、彼の中では最早馴染みの光景らしい。頭のなかでは妄想してるのか?


きいち『なぁ、昨日の晩飯なんだったよ?』
女性『えーカレーだよ。一晩寝かせたやつっ』
きいち『うわっ、すげぇいいね、それ。今度食べさせてよ』


世の中のカップルがするような会話を妄想してるんだろう?まぁベタベタな内容だな。

きいち『おっと…着いたか、よし降りよう』

……、…………?。今日は何かがいつもと違う。意中の女性が僕が使う改札から出ていた。そして僕がよく使うコンビニに行った。僕もコンビニに入った。彼は将来、彼女と結婚することがあれば、初デートはAマートだ、と言おうと心に誓った。

先にコンビニを出たきいちは職場に向かう、程なくして彼女も後を追うように歩いてくる。
同じなのか?何故かときめく胸、駅からの方向が同じという小さな事ですら喜びを感じる彼のこの感情は、最早恋心だったと言えるだろう。意外なほど彼女の職場は近く、入った先は私の職場から歩いて1分のライバル会社だった。


その時に彼を襲った感情は衝撃は出会った時とは比較にならない程だった。そして落胆した。それはそうだろう。同業のライバル社なのだから。
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