一人よがりのロミオとジュリエット
『はじめまして』の挨拶で始まった会合、上辺だけの中身のない馴れ合い、業務上の付き合い、そして自分が社内における立場、どれを取ってもいいことはなく、至福の時でなければならない空間は嘔吐しそうな最悪の状況だった。事実、きいちは本当に気分を悪くし、嘔吐した。会合に彼はいらないと判断した上司も冷たく『休んでろ』との指示。
会場の外でぐったりしていると、いろんなことを考える。意中の彼女の前で立派な人間に見られたかった。興味を持ってほしかった。こういう接点があると分かっていたなら仕事を頑張るべきだった。
悔しさか悲しさか?それとも違う何かなのか?
彼は込み上げる感情をただ正直に理解し、涙を流したそうだ。
無力を感じ涙を流す…人が他人に見せたくない素の部分。そんな状況に偶然にも意中の彼女が現れてしまった…。
きいちは大変狼狽した。何故?ドラマかそれともどっきりか?
いずれにせよ、お互いが相手を見知ってる立場、そしてライバル同士と今日知ったこの状況。きいちは軽く会釈をする事が精一杯だった。情けないこの醜態を必死に抑えつけ、口を開くと自分がどうなるか分からない。その場を凌ごうとしたその時、彼女が口を開く
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