ほととぎす
多摩緒は玄関から奈実江を迎えると、下駄をつっかけて下に降りてきた。奈実江に話し掛け
たが、冷たいといううより嫌悪感をあらわにした口調で赤ん坊を受けとった。
「さぁ、・・・」
そう言うと多摩緒は両手を前に差し出して、赤ん坊をよこせと言わんばかりに奈実江をにらみ
つけた。
「チョット、すこし待ってください。」
奈実江は赤ん坊の顔をもう一度見ようと、多摩緒に背を向けて赤ん坊の顔を花柄のガ―ゼ
のハンカチで拭った。奈実江は最後の別れをすると、シッカリしないといけないと思った。
赤ん坊は、奈実江の手から多摩緒に赤ん坊は受け取られた。

「もう2度と、この家にはこないで!」
多摩緒が「キッ」とつり上がった目で、いっそう奈実江を睨みつけら、奈実江は小さくうなずく
だけで何も出来なくなってしまった。
奈実江は多摩緒からのきつい言葉を聞くと、そのまま振り返らずに去って行くつもりでしたが、
木戸口に植えてある、槙の木と頃にくると思わず振り返ったが、もう多摩緒の姿は玄関の中
に消えそうになっていました。
奈実江は帰り道を一人上を向いて歩いて行った、下を向くと涙が目からこぼれそうで自分が
情けなかった、今までの決意は何だったのか赤ん坊を抱いていた両腕が寂しそうに奈実江
体からダラリとしたままだった。

「私は、何をしていいるの、何で涙が出るの、こう決めたんだから!」
奈実江は小走りに山名の家に向かった。

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