ほととぎす
村田の家では、多摩緒は玄関で赤ん坊を受け取って、そのまま奥の居間に入って赤ん坊を
入れるために用意していた嬰児籠(えんつこ)に入れた、多摩緒はそのままにして、座敷の
掃除に言ってしまった。

赤ん坊は今まで明るく見えていたのに、急に薄暗い狭い所へ置かれて見えている物は丸い
明かりがあるだけ、今までと違い何もごかない世界に置かれて顔を左右に動かしている。
明かりの中に、黒く細長い物がエンツコの中をうかがっている。それはこの屋敷のヌシである
アオダイショウの大蛇が、屋根の大きな梁からダラリと首を垂らして獲物を狙っている。
アオダイショウは独り言のように囁いた。
「なんだ、食い物か、それとも食えないのか?」
(ドタンッ、カサ、ガサ、にょろり)
ヌシの大蛇は部屋に人がいない事をいい事に、屋根裏から床に上に降りてきてエンツコの
ほうに向かっている。アオダイショウは人に危害をしないと言われているが、生まれて間もな
い赤ん坊を見て餌と間違ったようだ。エンツコに向かってカマクビを持ち上げて、エンツコの
淵に頭を載せて淵の上を進んでス-ッと中に入り込んでしまった。
「オマエは何者だ、オレはこの屋敷に三百年住んでいる大蛇だ」
「うっ、くっ、キャッキャッ」
大蛇はエンツコの中に入って、赤ん坊の腹の上にカマクビ載せて戦闘態勢に入るところでし
た。
「食いもんか?」 「ウン、邪魔が入った、またにしよう。」
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