ほととぎす
その頃多摩緒は七輪火鉢に鍋をかけて、その中に少しの量のメシ飯を入れてお粥をを作っ
ていたが、赤ん坊にはまだ離乳食は早かった。
リュウ婆さんが赤ん坊を抱いて、多摩緒の所にくると鍋の中のあんばいを確かめると多摩緒
に話し掛けた。
「あんた、ナンバ作りようと、お粥やらまぁだ早かろうもん。」

「バッテン、粉ミルクやら高価なモンは買えんけん、おも湯ばやろうと思うて。」

「そういや、吉治が山羊ば貰うてくるとか言いよったね。」
「それまで我慢して、おも湯ば飲まないかんね。」
「それより、名前は何て付けたとかいな。」


一ヶ月ほどして、赤ん坊は嬰児籠(えんつこ)の縁につかまりながら立つ事が出来ていた。

「ゆう太、ミルクが出来たよ、さあ飲みなさい。」

赤ん坊は奈実江が付けた「ヨシタカ」ではなく、吉治が「ゆう太」と名づけていた。

吉治が半年前に農家に頼んであった、山羊が村田の家に来ていたのでミルクは山羊の乳を
しぼった物だが、山羊が届く前は米粥の薄いオモ湯がミルク代わりだったが、栄養が足りな
いので、時おり近所の出産した女性に乳を貰いにも行った。

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