ほととぎす
嬰児籠(えんつこ)の中では、「ゆう太」と猫の「ミケ」がじゃれあっていた。
「オマエ、ゆう太っていうんだって。」
ミケはゆう太の口の周りをペロペロ舐めながら、まるで我が子を見ているような仕草だ。
ゆう太は、ミケの言葉は理解できたが、それを表現するスベをまだ身に付けてはいない、
理解しても、まだ条件反射の状態で、すぐに忘れてしまう。

そのうちに、ミケは子守りに飽きたのか、プイッと嬰児籠(えんつこ)を飛び出していった。
それと入れ替わりに、屋根裏から黒い物体がダラリと下がってきた。それはいつぞやも現われた、大きなアオダイショウのヌシが頭をぶら下げて、身体を弓なりに反り返っている。
「今日は、オマエを喰らいにきた。」
「しばらく見ぬうちに、よく太ったな。」
「オマエは2本足で立っているのか?もしや人間の子供だったのか!」
「おかしいな、吉治の嫁の多摩緒は、身重なところは無かったはずだが。」
「人間の子供なら食らう事は出来ぬ。」
「もし喰らってしまったら、ワシは人間どもにナブリ殺される。」
アオダイショウは、屋根裏の梁からブラリと垂れ下がり、何度もカマクビを上下した。
アオダイショウがブツブツ独り言を言っているうちに、多摩緒とリュウが部屋に入ってきた。
「コンチクショ-、ナンバショットカッ!!」
「多摩緒さん!何んか叩くモンッ、持ってきない!!」
「コンチキショ―!」
「コンチキショ-!」
多摩緒は座敷ホウキとハタキを持って飛んできた。
アオダイショウは、二人に見つかったと知ると、大きなからだを屋根裏の梁に上がろうとした。
リュウはホウキを多摩緒の手からもぎ取ると、長刀を構えるようにホウキを持った。
多摩緒は座敷ホウキをリュウに取られてしまったので、頼りなさそうなハタキを右手に持ち替えて、小太刀を持つように身構えた。
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