ほととぎす
「ごめんください」
女は村田家の木戸口につくと、其処から5間半(10メ-トル)ほどの道の両端に槙の木が
に植えてあり片側に5株あり、その間隔は1間(1.8メートル)ほどある。
その道を過ぎると大きな広場のような庭があり、道の右には黒の瓦葺を2層にした納屋があ
り中から牛の鳴き声が聞こえて、納屋の前には白や茶色の正鶏と体の小さいチャボ鶏が
いる。
道の左には猫額のように小さい畑があり、となりは赤レンガ塀の小屋があり屋根は赤瓦葺
きで、切り妻の屋根の破風の壁は無かった。
奈実江は、広い庭の中ほどに行くと長方形の飛び石が並べてあり、奥に母屋があり萱葺き
の屋根に軒先は瓦葺で鉤屋造りの旧家らしい家がある。
その母屋の左の5間ほど離れた所に、漆喰壁の土蔵が見えその奥にも納屋のような軒さき
が見える

奈実江は一回声をかけたが、家の中からは何の反応もない、玄関のかたわらに雑種の
ような成犬いて地面に腹ばいになっている。

「ごめんください、どなたも居られませんか。」
奈実江は2回目には、少し声を大きくして若干荒げる声で呼びかけた。
少し間をあけて、奥の方から多摩緒が返事をしました。

「ハ―イ、今行きます。」

「山名です。この子を・・・・」

「あなた、道からみえとった。その子なの。」
「その赤ん坊と逃げようと考えたでしょう!」

「えっそんな事。ありません。」
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