空音
 それは一瞬言葉を失い、ただただ見とれる事しか出来ないくらいに綺麗だった。
空から舞い降りた天使が、僕のほうに歩いてきているといったような錯覚に陥り、この世の全ての音を、僕の耳が受け入れる事すら拒んでいるかのように何も聞こえない。
「妃奈?」
僕は疑うわけでもなくその美しさに思わず名前を呼んでしまった。
「ごめん。男の人との外出とか初めてだから何着たらいいかわからなくて。。」
妃奈はとても綺麗だった。
長い黒髪はいつものようにとても綺麗で。
ジャケットもレースのスカートもまるで妃奈の為だけに作られたかのように似合っていた。
僕の小汚いジーパンが申し訳なく思えるくらいに。。。。

遊園地についてからの妃奈はとても楽しそうに乗り物を見ていた。
そしてこれから何に乗ろうかと一人で考え始め、僕が今まで見たことのない妃奈がそこにはいた。
「このジェットコースターに乗って~、バイキング乗って~、お化け屋敷に行って~。」
おいおい。。ほとんど絶叫系やん。おれホンマは絶叫系もお化け屋敷もはいれへんって。。
しかしせっかくの妃奈との初デート。ここでビビッているそぶりなんか見せる事は出来ない。
今日は朝からガラにもなく神様にお祈りしたんだから
「気を失う事がありませんように。」
と。あと
「できたら妃奈が絶叫系が嫌いでありますように。」
と。(笑)
しかし絶叫系の乗り物が嫌いなら遊園地はデートプランには入るわけがないだろうという事はこのときまで全く考えなかったわけで。。



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