空音
まさに急にチャンスは訪れた。
入来が力いっぱい打ったシュートを相手のゴールキーパーがはじき、そのボールが自分の目の前に転がってきたのだ。
俺はあまり覚えていないが思いっきりこのボールをゴールに蹴り込んだ。
ボールは見事にネットを揺らし、ここからは入来やらたけしやらなんだかもうよくわからないくらいにもみくちゃにされていた。
ていうか正直あんまり覚えていないので多分もみくちゃにされていただろう(笑)
とてもとてもうれしかった。
しかし、ひとつどうしても残念なことがあった。
それは
「妃奈にガッツポーズがしたかった。」
ということだ。

でもそんな俺の気持ちをかき消してくれるくらいに妃奈はとてもとてもうれしそうに笑っていてくれた。

俺は心の中で
「ほんとに子供みたいだな。。。」
とつぶやいた。

妃奈?楽しかった?ゴールは喜んでくれたかな?
でも俺はもっと嬉しかったんだよ。
試合に勝てたから?
違うよ。妃奈が笑ってくれたからだよ。
試合中は緊張とゴールの喜びでほとんど何も覚えてないよ。

たったひとつ、あなたの嬉しそうな顔以外は。
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