空音
 最近は妃奈の咳が一段と激しく、会話をすることが難しい時がある。
それはお母さんもわかっているみたいで、特に会話を交わすこともなくただ病室にいるだけといった時間が多くなった。

でもそれでも妃奈の横に入れるだけで俺は満足だったし、それでも良かった。

しかし、妃奈の体調は良くなるどころか悪くなっていくばかりで、一緒にいるだけでもいいといったその願いもかなわなくなってしまう。

「淳君。妃奈ね。しばらく面会できなくなるみたいなの。体調が戻るまでなんだけど最近は夜になると意識がなくなる時もあって、治療に専念しなくちゃいけないみたいなの」

妃奈に会うことすらできなくなってしまう。

神様は本当に残酷だ。
会うことすら許してくれないのだから

「会えなくても病院に来てもいいですか?」

馬鹿な俺はこんなことくらいしか思い浮かばない。

「ぜひ来てあげて。妃奈も淳君が近くにいてくれた方が頑張れるとおもうの。あの子最近一生懸命手紙書いてるの。本当にうれしそうな顔しながら。その時思ったの、妃奈は淳君に本当に幸せをもらっているんだって。だからこれからもきてあげてね。」

妃奈を失いたくなくて、すこしでも妃奈の近くにいたくて。
俺はこれからも毎日妃奈に会いに来ようと心に決めた。
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