恋の法則
藤沢は気の利いたことすら言わないけど、


私はそれだけで充分だったんだ…。




ただ、側にいてくれるだけで。





ひたすら自分の自己嫌悪を愚痴ると、


藤沢は



「あぁ」とか、「そうか」とか、



頷くだけだった。


けど何も言わないで、隣で座っていてくれたこと感謝したよ。



ひと通り愚痴が終わると、


「戻るぞ」


と藤沢が言った。


廊下での道のり、私は思い切って聞いてみた。



「何で来たの?」




藤沢は眼鏡を押し上げて、



「見ろよ。校庭。鬼山が走ってる」



見事話を変えてきた。



しつこく聞くと



「しつけぇ女は嫌われる」



と呟いて、さっさと教室へ戻って行った。



前の私なら、



ざけんなネクラ!!!



と怒鳴るとこ。




だけど、今はそう思わない。



藤沢は口が悪いけど、

あれは照れ隠し。


精一杯の優しさ。




今なら分かるよ。
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