恋の法則
静かになって座る私を藤沢が不思議そうに



「天宮?」



って呼んでくる。


きっと急に黙ったからだ。


どうしよう。


何か言った方がいいよね…。


あ、こういう時って

“ありがとう”だ。


でも私の口からはその言葉が出ない。


かっちかちに固まっちゃって、藤沢を見るだけ。



「いらなかったか?」

藤沢は私が握り締める缶へ視線を落とす。


気まずそうなその顔に私は


「違うっ」


って大きな声を出した。


その反応にアイツはビックリしてる。



「ココア好き!ちょー好き!大好きなの!」


缶の蓋を開けようと一生懸命指を動かす


けど、中々開かない。

心なしか手が震えちゃってる。


私…何動揺してんの?

てゆーか藤沢がすぐ側にいるから

だからっ…。


私は葛藤しながら指を懸命に動かした。


すると、ククッとかすかな笑い声が横でする。


目を上げる前に、私の手から缶が取り上げられる。



「バーカ」


藤沢はいとも簡単に蓋を開け、私に手渡した。


その笑顔に、私は体中の熱が顔に集まる。


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