恋の法則
藤沢は不審な私に気付き、帰り支度をしていた手を止めた。


「…どうした?」


片方の眉を上げて首筋をポリポリかいている。


「…うん。あのさ…」

「ああ?」


智美に視線を向けると笑顔で「いけっ」と頷かれた。

私は肺一杯に空気を吸った。


「あのさ、あ、あアイス好き?」

どもった。


「あアイス…」


藤沢は眉間にしわを寄せる。

この反応、アイス嫌い?

そもそも、甘いもの自体嫌いそう。


「そ…その、昨日、昨日のお礼に…?と思って。お、奢るよ?」

声、震えた。
かっこ悪過ぎ。

藤沢はちょっと考えてるのか下を向いた。

眼鏡が少し下に下がって、普段は隠れている藤沢の目が覗く。


まつ毛長いな、なんて思う。


ふいにその視線が私に向けられ、心臓が飛び出るかと思った。



「行く」

「へっ…?」



自分の鞄を肩にかけて私の腕を掴む。

状況が読めないで教室の出口へと
ずんずん歩く藤沢の横顔を見つめる。

「行くんだろ?」


前を見たまま、答えてくるし

掴まれた腕は熱いし

何か反則だ。
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