恋の法則
ふいにそらしてしまった視線。


その瞬間、まばたきをすることさえ忘れた。

私は藤沢から目を離したことを後悔した。



「…こ…太郎」


その名を呼ぶことになったから。


藤沢は私を見ていた目をふとずらし

自分の後ろ側を振り返った。


私の視線は藤沢の肩先を通り過ぎ、

校門の前に釘付けになっている。

無意識にその姿を、私の目が捕えたんだ。


学校ではその姿を見つけないように、必死だったのに。


公太郎は後ろを向いていた。

門に寄りかかり、何処かを見ていた。


「…天宮」


藤沢に呼ばれる。

聞こえてるはずなのに私の目線は、公太郎に。


私達の横を、誰かが早足で通り過ぎていく。

長い髪がなびいていてその子の横顔が一瞬覗く。


公太郎のクラスの女子だ…。


その子は、目の前の人に向かい手を上げた。


「公太郎君~」

公太郎君、と呼ばれた後ろ姿が振り返った。


私が見つめるその先で二人は会話を交わし、
そのまま校門を出て行く。


女の子が公太郎の腕につかまる。

公太郎は拒みもせず、歩いて行った。


私はその光景を、第三者のような気持ちで見送る。


…なに、あれ?


真っ白な頭の中で私は漠然とした疑問を浮かべた。

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