恋の法則
私は強張る藤沢の手を見つめた。


「んな訳ねぇだろ」


とかいつもみたいに乱暴な言葉で否定せずに、黙り込む。



ああ、やっぱりな。



藤沢は勘もいい。



きっと、公太郎には好きな子がいるって事知ってたんだ。




「何で…黙ってたの?」



「…」



「何でよ」



咎める言い方になり、口をつぐむ。



悲しみが次第に腹立たしさに変わってくる。


気持ちにブレーキがきかない。



こんなの八当たりなのにね。



「私はフラレてるくせに未練がましいとか思ってた?」



こんなこと、言いたいんじゃない。


だって藤沢は、ちゃんと話を聞いてくれた。

笑わないで聞いてくれたじゃない。




「私に構ってたのは、かわいそうだったから?」




意思とは裏腹に、私は藤沢が「そうだ」って言うのを待った。

でも、何も言わない藤沢が


事実なんだと、肯定しているようで嫌だった。


私の思考は矛盾していた。




「オレは」



とそれまで、無口だった藤沢が口を開いた。



「オレは確かに知ってたよ。
天宮の彼氏が他の女と関わってる事」



アイツがそう言う事を望んでたくせに




本人から聞くとショックだった。



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