恋の法則
藤沢はまるで昔のことを思い出すかのように言った。




「いつも図書室の窓際に座って、校庭を眺めてるアンタを見かけてた」




“見かけてた”


それを聞いて、私はつい最近までのことに思いを巡らせた。



図書室の窓際に佇み、そこから校庭だけを見ていた私。



校庭では…、いつも公太郎が部活をしてたから。




だから部活が終わるのをそこから見計らって、図書室を飛び出しって行ってた。



「待つな」って言うくせに、迎えに行くと必ず笑ってくれるんだ。



「何にもしないで、ただ座ってるアンタを見る事が
オレの日課にもなってた」



藤沢が言葉を途切った。



早鐘のように脈が打っている。

今も変わらずに、藤沢は私を見てるのかな。


怖くて、後ろを向けない。


あの眼差しから、逃げられなくなってしまう。



「天宮」



私は足元を見たまま。



「天宮、そのままで良いから聞いて」




耳を、塞ぎたい。




その先を聞いたら、私は私でいられなくなる気がする。




聞いては、ダメ。




私は首を横へ振り、視線を落としたままアイツの方へ顔を向けた。





「もう、いいっ…藤沢」





「好きだ」




私が制する前に、藤沢は言ったんだ。


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