恋の法則
私はノートを気にしながら


「なつみぃー ご飯ー」


と外で呼んでるお母さんに、「いらない」と力なく答えた。


多分お母さんは不審に思っただろうけど、それ以上は何も言わず階段を降りて行った。


その足音が遠のくのを確かめて、机から落ちたノートを拾った。



真ん中辺りで開かれたノート。


ビッシリと書かれた文字。



「…キレイな字」


文字は人の内面が現れるって言うけど、本当にそうだと思う。


私の字は全てが適当で誤字はしょっちゅうだし、それに比べて、藤沢の字は読みやすいし正確だ。



私は1ページ目から、藤沢が書いた文字を追いかけた。


たまに、書き直したような跡がある。

難しい漢字が平仮名になっていたりする。



『そういや、アンタクラスのドベだっけか』

初めて会話した時も、藤沢は嫌味を言ってた。


その箇所を撫でて、次々とページをめくっていく。



『何だよ?蹴り逃げ?』
悪戯に笑う藤沢。


『ばーか』
笑いをこらえる藤沢。

『変なやつ』
優しい顔をする藤沢。



『天宮』









『なつみ』



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