恋の法則
途中で文字ばかり並んでいたページが、真っ白なノートになっている。



その右隅に目が吸い寄せられた。




ポタッと、ノートの上に何かが落ちる。


それを合図に、白いページに染みが広がっていく。



私は自分の頬に手をやった。


そこで初めて、ノートを汚すものの正体を知った。



小さく、丁寧に綴られた言葉。




「…ばか…」




私からは自然と涙が流れてくる。



ねぇ藤沢。



智美がもし、アンタからのノートだっていうことを黙ってたとしたら、

バカな私はそのことに気付かないと思ってた?



「こんなの書くの…アンタしかいないじゃん…」




最初は分からなかったよ。


でも、これを見たら私は一発で分かっちゃうよ。



嗚咽を漏らして、ノートの上に顔を押し付けた。





何度も、書こうかどうか迷うアンタの姿が目に浮かぶ。



こんな不器用な温かさを持ってるのは、アンタしかいない。





“頑張れ”




私の心をこんなに揺さぶるのは



藤沢しかいないよ。

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