恋の法則
声をひそめて、真剣な表情のまま私を見つめる智美。



「このままじゃ嫌なんでしょ?普通に話したいんでしょ?

それなら謝らなきゃ始まらないでしょ!」


私が頷く前に、智美が背中を叩いた。



「行っといで!授業の弁解ならあたしがうまくやっとくから!」


押し付けられた鞄を抱えて、私は教室を出た。



廊下を出て藤沢の後ろ姿を探すけど見当たらない。



…藤沢。



私の足は歩く速さから、早足になり、とうとう走り出してしまった。



「廊下は走りません」とにこやかに笑う男女の絵が描かれたポスターがあったけど無視して走った。



廊下を曲がると職員室から地理の先生が出て来て、走る私に向かって


「おいコラ。何処行く?」


と声を掛けてくる。



私は走りながら



「すいません。具合悪いです」



と答えて、階段を掛け上がった。


下から「保健室は下だろー」とか騒いでいたのが聞こえたけど、構わないで階段を登った。



きっと、藤沢はあそこにいる。



図書室の窓際の3番目の席に座って、外を見てる。


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