恋の法則
驚いたように後退する藤沢に構わず、私はその顔をはさんで動きを止めてやった。


後ろの本棚に頭をぶつける藤沢は、私に追い詰められた。




「どうしたの?」


藤沢は私の質問に眉間にしわを寄せ、目をそらすだけ。



「そこ、切れて血が出てる」



私の指摘する、藤沢の口元は赤くにじんで少し腫れていた。



公太郎の頬も、こんなの風に赤くなって腫れていた。



「ねぇ…アンタ」


私の予想が当たっているなら




「公太郎に…やられたの?」


罰の悪い顔をする藤沢。



「じゃあ…公太郎を殴ったのはアンタ?」



何も答えないところを見て、私は確信する。


思わずため息が出る。



「何で公太郎と一緒にいたのよ?」


藤沢はふて腐れたような顔をして「関係ねーだろ」とぼやいた。



口で切ったような傷は私の色々な感情をごちゃごちゃにした。


バカなんだから…。



私は鼻をすすって下を向いた。




「本当…バカ」




アイツの襟元を掴んで、そのまま抱きついてやった。



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