恋の法則
藤沢のにおいに包まれる私。


藤沢の鼓動が耳元でしっかりとうかがえる。


「…おい…」


と行き場の分からない手をうろうろさせ、下に下ろすアイツ。



「…バカ」



と私は呟いた。

額をアイツの胸元に押し付ける。



「私の為…?」



「……」



「アンタ…どうかしてるよ」




沈黙する私達。


かすかに聞こえてくるのは、グラウンドの体育の先生の声。



藤沢の小さな息遣いが、胸を締め付ける。



やがて


「そうだな」


と藤沢は消えてしまいそうに言った。



私はそっとそこから顔を上げる。



アイツは横を向いて、窓を見ていた。


前髪のかかる瞳は澄んでいた。




「お前を好きになってから…どうかしてるな。前みたいに自分の気持ち、抑えらんねぇんだ」



身を預けていた本棚から少しだけ首を動かして、私を見る。



泣きそうで、笑い出しそうな、そんな顔。



「天宮の泣くとこ…見たくなかった」


低く呟いたアイツが、私はどうしようもなく愛しかった。

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