Five LOVE☆
車を駐車場に停めて、病院に入ると、看護士の友達、峰浦が迎えてくれた。


「お母さん!?」


真っ先に悠月が病室に入って、声を掛ける。


「ゲームソフトっ…
完成…したよっ…無事に…」


「よかっ…た…さ…すが…お父さんの娘ね…」


何度も言葉をくぐもらせながら呼吸器越しに言う悠月の母。

身体にいくつも繋がれている機械やら点滴が、かなり痛々しかった。


悠月の母親が、僕に気付いて声を掛けてくれた。


「はい…」


「悠月を…よろしくね…
このこ…さみし…がり…だから…
いっしょ…う…支えてあげて…」


「もちろんです。」


僕はそう言って、悠月を強く抱き寄せた。


「ハァッ…ゆう…づきっ…
ごめんね…ゲーム…プレイしてあげられなくて…
か…ずゆきさんと…幸せに…なりなさい…」


悠月のお母さんはほんの一瞬だけ、僕たちに笑顔を見せた。


そのとき…

ピピッ…ピピッ…


心電図が音を立て始めた。

僕はナースコールを押した。

ついでに…


勇気を出してこう言った。
悠月には聞こえない声で、ただ一言。

「もう…楽にさせてあげたらどうですか?」


「呼吸、脈拍低下!」


慌てて入ってきた看護師の声が響く。


僕たちは…病室の外に出された。


「なぁ…もう…楽にさせてやったらどうだ?」


僕は、峰浦にもそう言ってみた。


「そうしたいのは山々だが、こればかりは…
栗沢先生のご判断だっ…」

言いかけたところに、先生のご登場。


「先生…」


「ああ。
娘さんですか。
お母さん…頑張っていましたが…
今日の夜まで…持つかどうか…
最善は尽くしましたが…既に全身に転移してしまっていて…」


「先生…
もう…お母さんを…お父さんのところに行かせてあげてください。
私に会ったとき…一番幸せそうな顔してました。
もう…私も…ゲーム完成の報告できましたし…
母は…十分…まんぞっ…フェッ…グスッ…」


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