Five LOVE☆
その翌日。

私たちは国内線飛行機の中。

行き先は、北海道。
2泊3日。
1拍目と2泊目、別々のホテルに泊まるらしい。

飛行機の中では、何だかんだで和之の肩にもたれてずっと熟睡してた。
機内食も、あまり手をつけていない。
身体が重くて、食べる気分じゃなかったのよね。

それにしても…あの通夜の日から、和之がなんか変なの。
何かを考え込むような顔つきしてるし…
和之に限って、浮気とかは絶対ない。
それだけは言えるんだけど…
いつも私が悩んでいるとき、和之は励ましてくれた。
助けてくれた。

今度は私が…そのお返しをする番。

そんなことをぼんやりと考えているうちに、また眠ってしまっていたみたい。
気付けば空港に着いていた。
手続きを済ませ、新千歳空港に降り立つ。

小樽とか日本の名水百選に選ばれている水が噴き出す公園とか…皆でいろいろ名所を観光して、
1日目に泊まるホテルに到着。
私は当然のように和之と同じ部屋。

その後、全員が集まっての夕食会。
会場にピアノが設置されていて、社員の皆のリクエストに答えて和之とあの曲を弾いた。
ずっと和之と一緒にいられるって、そのときはそう思ってた。

だけど、気になってたんだ。
あの曲を弾き終わった後の、少し切なげな和之の表情が。

お風呂上がりに館内着の浴衣を着て、部屋に戻ろうとスリッパの音を響かせながら廊下を歩く。
そのとき、自販機のブーンという作動音に混じって、誰かの声が。


「君にとって、最初で最後の社員旅行かな?
彼女には…このことは?」

「そう考えてもらっても…いいかもしれません。
まだ言っていませんけど。」

「いいのか?」


「言っても…寂しくさせるだけですから。」


和之…?
最初で最後って…どういうこと…?

ふいに、立ち眩みに襲われた。
どうやら、その弾みで一般のお客さんにぶつかってしまったみたいだ。


「何だ君?
勝手にぶつかってきて…
ふふ。
よく見たら可愛い顔してるじゃん?」


身体を上から下まで舐めるように見下ろしたそのサラリーマンの男は、私の浴衣の胸元に手を掛けてきた。
怖いっ…


「あんた、何なんですか? 俺の女から離れろよ。」





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