Five LOVE☆
え…?


「チッ。
男持ちか。」


男はそう言って、足早に去っていった。

私の後ろにいたのは、確かに和之で。


「悠月…
ごめんね、怖い思いさせて…」


そう言って優しく、抱きしめてくれて。
その直後私は、和の腕の中に崩れるように倒れた。



「んっ…?」


ひんやりとした感触にゆっくりと目を覚ますと、
私のすぐ横に和之が居て、私の額に冷たいタオルを当ててくれてた。


「軽い貧血だってさ。
だけど…熱あったし…
一応…ね。」


「ハァッ…和之…ありがとっ…」


「気にすんな?
さっきはホント…すぐ助けてやれなくてごめん…
何もされてない?
悠月、可愛いんだから、一人で出歩いちゃダメだよ。」


うわぁ…
今さりげなく可愛いって言われた気が…///
サラっとそういうことを言われると…やっぱりまだ照れる。


「ふふっ。
顔赤いよ?
まぁ…熱あるし仕方ないか。」


また…子犬みたいに可愛い顔でそんなこと言う…
反則だよっ…///


そんな中、さっきの笑顔とはまた違った、真剣な顔を私に向ける。


「この何日間か…
ずっと悩んでたの。
悠月に言うべきか。
言っても…悲しませるだけだってわかってたから…」

「言ってよ…
和之。
好きだからっ…
どんなこと言われても…だいじょぶっ…」


別れ話かもしれないとかいう不謹慎な考えが頭をよぎって…
つい泣き出してしまった。
でもそれは…

違った意味での別れ話だったんだ。


和之が差し出して来たのは…1つのデモテープ。

私と和之の連弾弾き語りが録音されている、先日亡くなった、春香のお母さんの病室にあったものらしい。通夜に、春香のお母さんと私のお母さんの両方にピアノを教えていた、
プロのピアニスト兼、作曲家の人が来ていたんだって。

私のお母さんの通夜が終わった後、
その人に和之が呼び出された。
ピアニスト兼作曲家だっていう名刺を渡されて…


「君は素晴らしい才能を持っている。
ゲーム会社はもったいない。
私はウィーンでピアノを教えているんだが、
現地に来て私のもとで学ばないか?」


そう、言われたんだって。
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