新撰組と鬼の娘
誰の気配もしなくなるまでにどれくらいの時間がかかったのだろう?
そっと外へ出ると、血の嫌な匂いが私を纏った。
気持ち悪くなった。
その死体が転がるなかで両親を探した。
腰が抜けそうなのを我慢して、呼び続けた。
「夜…………魅…!」
『お父さん!!』
お父さんの声がして、お父さんの姿を見つけた。
だけど――――
『―――!!』
その姿を見て、涙が零れた。
肩からお腹にかけて斜めに走る切り傷。
血が留まらない状況でお父さんは私に言ったのだ。
「いい、か……夜魅…。お前……は、鬼だ。お父さんや……お母さん……この村にいる者は…全て…鬼だ…。」
私はお父さんの手をしっかりと握って、話しをちゃんと聞いた。
それは薄々私も気付いていた。
人じゃないことを……。
「このっ……村の…生き残りは……夜魅……。お前だけ、だ…。必ず……生きろ…!そして……ここから逃げなさい…!」
そう言ってお父さんは息を引き取った。
私はそっとお父さんの手を離し、血に塗れた着物を脱ぎ捨て、男物の着物に着替えた。
そして、護身用に持っていた小太刀を差して村を飛び出した。
走って、走って、止まらず走った。
涙もいつしか乾いていて、肌にあたる風がいつもより冷たく感じた。
そしてどこかの大きな町に出た時、私は土手に倒れた。
――ごめんなさい、お父さん…。私、ここで死んでしまうかもしれません…。――――
そう最後に思い、意識を手放した。