新撰組と鬼の娘
『わぁ……。人、いっぱいいますね。』
私達が着いた頃には、もう沢山の人で賑わっていた。
総「そうだね。はぐれちゃうといけないから、手を繋ごうか。」
そう言うと、私の手と自分の手を絡ませた。
『ぁっ……。』
私の手を引き、どこかに行く沖田さん。
『沖田さん、どこに行くんですか?』
総「このお祭りね、ちょっとした舞台があるんだ。それ見ようと思って。どう?」
芝居かぁ……。
『いいですね。行きます。』
そう言って、手をさっきよりもちょっと強く握って道を進んだ。
よく見える場所に座った私達。
総「まだちょっと時間あるね。」
『じゃぁ、私の話聞いて下さい。』
総「ん?いいよ。」
『今この話をするのもあれですが………私、村を襲った人の顔を、1度見ているんです。』
総「えっ………?」
そう、見ている。
私も、相手も。
お互いの顔を見ている。
私も、相手も見て見ぬふりをした。
『あの顔は…忘れません。でも、確かその人の仲間が言っていた気がするんです。……《早く京に戻りましょう》と。』
私はそれすらも聞かぬふりをして京に来た。