新撰組と鬼の娘
夜魅side
来た。
あいつが、来た。
私の中で何かが動き回る。
憎いという感情が全身を覆う。
私はさっき、皆に何を言おうとしたんだろうか。
『私は………』
その後、私は何を言っていた?
男「ほぅ。自ら出て来るとはね。私の協力をしてくれるのかい?」
『………しない。』
もし、私が協力をすれば、村の皆は帰ってくる?
……帰ってこない。
自分が、戦で勝ちたい……死にたくない。
それだけで、私達鬼に協力を求め、協力しないと、戦う気はないと言っただけで殺されてしまった皆……。
『私は、皆の仇を取る!!』
男「私を斬る、とでも?その震えた手で握っている刀で何が出来る?」
怖いもん。
当たり前じゃない。
男「……私が、憎いだろう?」
『は…………?』
男「ならその憎しみの心に身を任せろ。鬼となれ。理性を捨てろ。……仇をとりたいのだろう?」
『理性を捨てればどうなるかぐらい、分かっている。そんな言葉に乗せられない。』
男「それはどうかな?よく自分を見てみろ。」
男の勝ち誇ったような笑み。
私は自分の手を見て、持っていた刀を落とした。