ある人妻の過去
でも…どう見ても私が書いた字ではない。


と言うか、まるきり別人が書いた物。



 『これ私やない!』


絞り出した声で、私は男に反論した。



 「そう言われてもね…  困るなっ!」


男からニヤけた表情は消え、威圧した恐ろしい顔で私を睨んでいた。


『…』


頭が真っ白になった。


どうしよう?

どうしたら良いの?


私は、記憶が途切れたまま裕樹と暮らす家に向かっていた。



そして、私は裕樹にこの事を話した。


きっと、彼なら力を貸して、この問題を解決してくれる…

私は彼を信じて疑わなかった。


 「智子が借りた     金やないなら
  払う必要ないやろ?  少し様子を見たら
  どう?」


彼からの言葉…


今考えたら、ムカつくけど、その時は、霧がなくなるように心が晴れた。

【うん。きっとどうにかなる!】


私は、そう安易に思ってた。
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