雨音の記憶
俊介は、ベッドに上半身を起こすと窓の外を見た。

雨は少し強さを増して、部屋の中に響く雨音も強さを増していた。そして、俊介の眼むさも未だ完全に無くなっては居なかった。此処まで眠ったのならと、開き直って俊介は再びベッドに横に成った。それとほぼ同時に彼は眠りに付いた。そして、又しても夢と分かる世界に迷い込んでいた。

彼はやはり小学生だった。

ただ、さっきより少し時間が経って居る様で、クラスの面々も少し変化が有った。今は算数の時間だろう。俊介が指名され、答えを黒板に書こうとしたのだが、背のあまり高くない俊介は答えをその場所に書く事が出来ずに困って居た。そこに、突然男性教師が現れ俊介をひょいと肩車したのだ。

そして、答えを書く場所に手が届き、指定された場所に答えを書く事が出来た。その答えは正解だった。俊介は肩車から下ろされると御褒美に頭を撫でられ、それが無性に嬉しく思われた。

俊介は又しても其処で目を覚ました。何故か男性教師の整髪料の香りを思い出した。柑橘系の爽やかな香りだった事を、懐かしく思い出した。

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