夏軌くんと遼ちゃん
彼女の姿が見えなくなり、内海が軽くため息をつく。
それからこちらを振り返って、僕の前に立ち一生懸命背伸びしながら、内海は僕の髪に触れた。
「……鳴瀬のばーか」
そう呟くと、内海は僕の髪を思い切りグシャグシャにし始める。
「―――っわ、内海!?」
「うっさい、動かない!!」
今日の朝、一生懸命整えた髪は、一瞬にしていつものナチュラルヘアーへと戻っていく。
内海はそのまま手を滑らせて、僕の頬に触れる。
「…やっぱり、こっちのがいい」
そう言って、内海は優しく笑う。
「あたしは、こっちのが好きだよ。」
――とくん、と胸が高鳴った。