桜散る頃に
不安
千歳は母親と自分たちの家に帰ったあと、自分の部屋で考え込んでいた。

小さい頃から大好きだった美咲。
弱い自分をいつも守ってくれた。
アメリカへの引っ越しが決まった時、離れるのが嫌だと親に泣きついたこともあった。
ようやく美咲よりも強くなり、美咲を守りたいと日本に帰ってきたのに…。

さっきの美咲は自嘲するように笑って言った。

『私は死ぬんだ…』

何か治療法はないのか聞いたが、美咲は首を横に振った。

『入院して治療すれば、病気の進行を抑えられるが完全には治らない。それにうちにはお金もない。もういいんだ。私は充分生きた。それに最後に千歳に会えた。』

それだけ言うと美咲は黙ってしまった。
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