黒猫~special cat~



誰も、“桜龍に会えて嬉しい”なんて思わなかった。

…いや、思えなかった。


目の前で何かを抱え、一人苦しみ震える
琉夏に、何も言えなかった。
簡単に“背負わなくて良い”なんて。
琉夏が背負っている重さは、責任は

そんな簡単なたった一言で片付くような重さじゃなかった


桜龍に出会えたこと以上に、琉夏の事を気に掛けていた

無口な一匹狼が
冷静な一匹狼が

肩を震わして、何かに耐えて
歯を食いしばりながら誰にも顔をみせず


『…俺、今日はもう帰るな。』


なんて苦しそうにいうから。


誰も、声を掛けられなかった





< 38 / 121 >

この作品をシェア

pagetop