黒猫~special cat~


周りの空気が静まり返る。

フッと、琉樹が口角を上げ、
そしてまた嗤う。


『俺って、嘘吐きなんだぜ』

ただ呆気に取られ、琉樹が次々に放つ言葉を皆は静まり返ったこの部屋で、
ただただ、飲み込んでいた。

『…琉夏とは違うタイプの。
俺は、自分の気持ちを隠して…』

そこで琉樹はハッとすると、黙り込んだ


…僅かな沈黙だった
それさえも、永く感じた。

国崎組は真鍋がやられた時点で逃げた
真鍋は真っ赤な海に溺れるかの様に、気を失っていた

「…ど……る?」
『…あ?』

「……どうすれば、お前は琉夏に戻る?」

こんな状況で呟いたのは、碧だった。

その呟きに琉樹は大声をあげて笑った


『…馬っ鹿じゃねぇの?
琉夏が、"戻る"?―――まるで俺が琉夏じゃねぇみたいだなッ

俺は、"琉夏"の中にいる、"琉夏"だ』

そして、琉樹は静かに告げた。




『――――俺が"琉夏"を壊そうと思えば壊せる

琉夏を殺そうと思えば殺せる』



「「「――――ッ!!!」」」

その場にいた全員が息を呑んだ。
琉樹は勘違いすんな、と呟いて


『俺は"琉夏"じゃない"琉夏"だ』


そう言って、去って行った



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