ずっとあなたが好きでした
「すぐに現実を受け止めれなかったんだ。何だろうな。暫くは実感もなかった。けど、何日も部活に行けないと、これが現実なんだって分かってきて、最近はすっげぇ落胆してた。」

「そう。だんだん元気がなくなってた様に見えたよ?」

「そっか。分かりやすいんだな、俺。今日、初めて泣いたんだ。まさか矢田の前でこんなんになるなんて思いもしなかったけど。」

俊也は照れながら笑っていた。

「矢吹くん…」

「何か、すっげぇすっきりした!ありがとう!」

俊也はさっきまで泣いてたとは思えない、清々しい顔をしていた。

いつものカッコ良い俊也だった。

「矢田」

「何?」

「暗い話しちゃって、ごめんな。俺、成績悪いし、受験勉強に励むよ。一様、俺も受験生だしな!」

俊也はそう言っている程、成績が悪い訳ではなかった。

「矢吹くん、あの…大丈夫だから!何が大丈夫か分からないけど、大丈夫だから!」

「え?矢田?」

俊也は笑っていた。

自分でも何を言っているのか分からなかった。

「そうだな、大丈夫だよな。俺、夏休みに手術するんだ。まぁどうせ変わらないけど、やらないよりは良いよな。」

俊也は私の目を真っ直ぐ見て言った。

「うん、そうだよ!私、お見舞い行くからね!」

「え?お見舞い?」

俊也はびっくりして、私の顔を覗き込んだ。

自分でも自分の発言にびっくりした。

「行けたらね、行けたらだけどね!」

俊也は笑っていた。

「ありがとう。元気出た。」

俊也はそう言ってくれた。

暫く、お互いの顔を見合わせていた。

俊也は私の肩をポンと叩き、去って行った。

一人になって、一連の出来事がフラッシュバックされた。

自分がした事、言った事を思い出すと、もの凄く恥ずかしくなった。

そして、俊也の顔を思い出した。

俊也の優しい眼差しをしている時の顔が私は大好き。

この俊也との一時が、暫く頭から離れなかった。

多分、この頃からかな?

私は俊也が気になって気になってしょうがなくなっていった。

今までとは何かが違う…

久しぶりのこの感じ…

どこか懐かしいこの感じ…

伊藤くんを好きだった頃と同じ様な感覚を私は思い出していた。

< 24 / 100 >

この作品をシェア

pagetop