ずっとあなたが好きでした
どうしても、俊也のとこに行きたくて、受験勉強どころではなくなっていた。

矢吹くんに会いたい…。

その一心で、私は先生に頭痛が酷いからと嘘をついて、早退させてもらった。

凄い勢いで塾を飛び出し、俊也の病院に向かった。

俊也は病院のベッドで眠っていた。

「矢吹くん?」

「矢吹くん?」

俊也は熟睡していた。

15分位しても、目を覚まさなかったから、起こすのも悪いと思い、帰ろうとした。

「あれ?矢田?え?矢田じゃん!本当に見舞いに来てくれたの?」

俊也はびっくりしていた。

「うん。今日、塾であっこに聞いて、気付いたらここにいたの。」

「びっくりした。起きたら、矢田がいるし、びっくりした。いつからいたの?」

「15分位前からかな。何度も呼んだけど、眠ってたから、起こすの悪いと思って、帰るとこだったの。」

「マジで?ごめん。全然気付かなかった。」

「良いよ。すごく気持ち良さそうに眠ってたよ。」

「矢田ここに座ってたの?」

「そうだよ。」

「マジか。ごめん!完全に爆睡してた。部屋暑くない?大丈夫?何か飲む?」

私にジュースを出してくれた。

「ありがとう、矢吹くん!」

暫く沈黙が続いた。

何か話さなきゃと思った。

「矢吹くん、どう?肩の調子は?」

「一様、手術は終わったんだ。でも、もう前みたいに野球は出来ないって。分かってたけどさ。大会も俺、出てないだろ?あいつら、一回戦で負けちまったみたいで、田川怒ってるだろうな。」

俊也は笑っていたけど、どこかやり切れなさや悔しさが隠しきれていなかった。

「矢吹くん、大会出たかった?」

「あぁ。出たかったよ。医者に頼んだ位だしな。当たり前だよ。」

「矢吹くんが出てたら、どこまで勝ち進んでたんだろうね。」

「県大会優勝だっただろうな」

「本当?」

「それは無理だな」

俊也は笑っていた。

「やっぱり、また野球やりたい?」

「何言ってんだよ。もうやれるわけねぇよ。」

「やれば良いよ。また」

自分でも何を言っているのか、よく分からなくなっていた。

流石に、優しい俊也も頭にきたのか、怪訝そうな顔をしていた。

「選手じゃなくて、教える方!矢吹くん、野球上手いから、教師になって、野球部の顧問になれば良いじゃん。」

「教師かぁ。でも今はまだそんな事まで考えられねーよ。」
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