ずっとあなたが好きでした
嫌な女
保健室に、俊也の野球部顧問の石塚先生が入って来た。

私には、二つ下に実という妹がいた。

実は野球部のマネージャーをしていた。

色白で小顔で美人で、長身で足も長く、姉の私から見てもモデルの様な妹だった。

おまけに勉強も出来、常に学年で五番目に入る優秀な生徒だった。

才色兼備とは彼女の様な人の事を言うのだと誰もが言っていた。

そして、周囲からは、よく気が利き、明るくて良い子だと評判だった。

俊也が私の事を石塚先生に紹介した。

「矢田実のお姉ちゃんの矢田香さんです。」

石塚先生は、びっくりして私の方を見た。

「え?君?君が矢田のお姉さん?三年生にお姉さんがいるっていうのは聞いていたのだが…。誰だろう、誰だろうと思っていたんだが、君か…」

そして、

「全然似てないなぁ。矢田(実)は美人だもんな。それに明るくて、本当に良い子だ。良い子がうちのマネージャーになってくれて、先生は嬉しいよ。」

俊也が一瞬まずいという顔をした。

「そうですか。有難うございます。」

美人で明るくて勉強が出来れば、少し性格が良いだけでも、良い子だと思われるの?

良い子かどうかなんて何を基準に分かるの?

本当に良い子かどうかなんて誰が分かるの?

本当に良い子なら、実はどうして、何人もの男の子に思わせぶりな態度をとる事が出来るの?

自分の事しか考えていない、ただ自分が良い思いをしたいからだけでしょ?

本当に良い子かどうかなんてアンタになんて分かる訳ないでしょ?

どうして、矢吹くんの前で、こんなどうでも良い事で恥をかかなきゃいけないの?

私、何か悪い事した?

ていうか、アンタ!

矢吹くんに大丈夫って言った?

矢吹くん、今、肩痛めたんだよ?

アンタ、野球部の顧問でしょ?

このクソじじぃ…!

こんなじじぃいなくなれば良いのに…

腸が煮えくり返りそうだった。

悔しくて泣きそうだった。

そうこうしている間に、石塚先生は出て行った。

けど、よく考えてみれば、こんな事言われるの今に始まった事じゃないし、今はどうでも良い。

あんなじじぃの言葉を間に受けるのも馬鹿馬鹿しい。

考える時間が勿体ない。

それより、矢吹くんが…

俊也に聞いてみた。

「肩の具合はどう?少しは良くなった?大丈夫?」

「多分、大丈夫。だんだん痛みがなくなってきてる。矢田?」




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